犬・猫の循環器疾患に関して、専門的な獣医師が常時在籍しております。
犬や猫の高齢化に伴い、心臓の問題を抱える動物が増えました。特に、心臓病では病気の早期発見や治療の開始時期の見極めが大切になります。循環器科では、超音波検査やレントゲン検査、心電図検査、血圧測定などを行い病気の状態を評価し、適切な治療法をご提案致します。治療の基本は、内服薬による内科的な治療ですが、病態よっては手術のご提案をさせていただく場合がございます。
担当医のご紹介
西浦 照二
専門的な知識とエビデンスに基づいた治療により、動物の心臓の健康を守るお手伝いをいたします。
些細なことでもお気軽にご相談ください。
Profile
資格
- 獣医循環器認定医
所属学会
- 獣医循環器学会
こんなお悩みありませんか?
- 咳をする
- 呼吸が速い
- 疲れやすくなった
(散歩に行く距離が減った)
- ふらつきや失神が認められる
- お腹が張っている(腹水貯留)
検査内容
以下の検査が、循環器検査として一般的に行われる内容です。
これらの検査は1つだけですべてが分かるわけでなく、組み合わせることで正確な病気の診断、
心臓の状態を判定できます。
診察時にどのような検査の組み合わせが良いかはご提案致しますので、ご遠慮なくご相談ください。
身体検査
患者の一般的な健康状態を評価し、心臓や肺の音、脈拍、体温などを検査します。
血液検査
血液検査を行って、貧血、炎症、電解質異常などの全身的な疾患の有無を調べます。
血圧測定
血圧測定は高血圧や低血圧などの問題を調べるために行われます。
レントゲン検査
レントゲンは胸部の画像を提供し、心臓の大きさの評価、肺・気道の異常を視覚化するのに役立ちます。
心電図
心電図は心臓の電気的な活動を記録し、不整脈や心臓の異常を診断するのに役立ちます。
心臓超音波検査
超音波検査は、心臓や大血管の構造や、心臓のリアルタイムな動き、ドプラ法による血液の流れを可視化し病変部位の特定、心臓機能の詳細な評価、時にはコントラスト心エコー法を利用した血流の詳細な評価を行うために使用されます。
心臓バイオマーカー検査
心臓に加わっている負荷がどの程度か?心筋にどの程度障害が出ているのか?と言うことが血液検査にて調べることができます。
健康診断の採血の時に検査を希望されることが多い心臓検査項目でもあります。
症例
循環器の主な疾患をご紹介いたします。
循環器科の主な病気について
僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁は心臓の左心房と左心室の間に存在する弁で、心臓が収縮したとき血液が左心房へ逆流しないようにできています。
僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁装置(弁尖、弁輪、腱索、乳頭筋)に異常をきたし、僧帽弁逆流を引き起こす疾患です。犬の主な原因は、加齢に伴い発生する弁尖および腱索の異常(粘液腫様変性)による弁尖逸脱になります。その他にも感染性心内膜炎、他の心疾患に伴う弁輪の拡大や腱索・乳頭筋の異常によるものなどがあります。
本疾患は老齢の小型犬では非常に多い病気であり、犬の心臓病の約2/3を占めています。加齢に伴い進行し、早い場合は5~6歳で症状(発咳、運動不耐性、呼吸困難など)が現れる場合もあります。進行すると肺水腫を起こし、呼吸困難で死亡することもあります。
治療に関して、正確な診断を基に各種ステージにあった内科治療を行うことが一般的です。一方、状況によっては内科治療の限界もあり外科治療が推奨される場合もあります。
肺水腫が発生した場合は、呼吸困難を呈し生命を脅かす状況である可能性があるため集中的な治療が必要です。当院では24時間酸素濃度、室温、湿度のコントロール可能な動物用ICUを設置しております。
酸素室での管理が困難な重症例では、気管挿管管理による集中治療も行っております。
こんなことはありませんか?
- 老齢の小型犬である
- 好発犬種である(チワワ、マルチーズ、T.プードル、ポメラニアン、キャバリアなど)
- 過去に心雑音を指摘されたことがある
- 咳をする
- 運動を嫌がる
- 疲れやすい
- 咳と一緒にピンク色の液体が口や鼻から出て呼吸困難になったことがある
- 失神することがある
肺高血圧症
肺高血圧症は、肺動脈と呼ばれる心臓から肺に血液を送る血管の血圧が上昇することで、血液の流れが悪くなる病気です。本病気は軽度から中程度の場合はほとんど症状がありませんが、進行した場合は活動性低下、息切れ、咳、四肢のむくみ、腹水、失神、喀血などの右心不全症状が出るようになります。来院時の主訴として多いのは運動不耐性(45%)、発咳(30%)、呼吸困難(28%)、失神(23%)になります。
本疾患の治療は原因が様々であり、原因となる基礎疾患により治療法は異なります。
治療の際は定期的な検査による、薬剤の種類や用量調節が必要になります。
肺高血圧症でお悩みの方はご相談ください。
こんなことはありませんか?
- 咳をする
- 呼吸が浅く早い
- 疲れやすい
- 運動を嫌がる
- お腹が膨らんできた
- 失神することがある
フィラリア症
フィラリアとは蚊が媒介して犬の心臓や肺動脈に寄生する寄生虫です。フィラリア症は予防薬を投与することで感染を予防できるため現在では珍しい病気にはなっております。しかし、不適切な予防薬の投与や飲み忘れのあるケース、保護犬さんなどでの発生は見られます。
本病気には大きく2つのタイプがあります。(急性期、慢性期)
一般的な時期は慢性期であり、寄生虫は肺動脈内に寄生します。感染の初期や寄生している虫が少数の場合はほとんど症状がありません。しかし、病期が進行すると寄生虫により血液の流れが物理的に妨げられること、肺血管自体に病変を形成することで肺高血圧症をおこし、咳が出る、息が荒くなる、運動を嫌がる、腹水などの右心不全徴候が出ます。本病態に関しては、内科的に治療を行います。
一方で、急性期は本来肺動脈内に寄生するフィラリア虫体が、右心房内に移動してくることで発症する病態です。この場合は早急な循環改善治療と、フィラリア虫体のつり出し術が必要となります。
フィラリア症でお悩みの方はご相談ください。
こんなことはありませんか?
- フィラリア予防をしていない
- 過去にフィラリア症と診断されたことがある
- 咳をする
- 息が荒い
- 運動を嫌がる
- お腹が膨らんできた
- 失神する
- 突然倒れてぐったりとしている
- 赤い尿が出た
拡張型心筋症
拡張型心筋症は心筋症の一つで、心臓の収縮能力が低下することで、心臓の拡大を引き起こし、心不全症状(咳、失神、運動不耐性、呼吸困難)を引き起こす心筋疾患です。
遺伝性のことが多く、アメリカンコッカースパニエル、ダルメシアン、ドーベルマン、ボクサーなどの大型犬に見られます。また加齢に伴って発生する可能性が高くなります。時に突然死することもあります。
治療に関して、症状の軽減や進行を遅らせる事を目的として内科治療を行います。
強心剤、血管拡張薬、抗不整脈薬、利尿剤、栄養補助療法など症状に合わせて行います。
こんなことはありませんか?
- 大型犬または好発犬種である
- 心雑音や不整脈を指摘されたことがある
- ふらつく事や、時々倒れる事がある
- 運動を嫌がる
- 呼吸が速い
- 咳をする
肥大型心筋症
猫において最も一般的な心疾患です。心筋肥大が特徴的な病気ですが、様々な病気により肥大型心筋症様の病態になります。心臓の壁が分厚く硬くなることで、左心室に血液が貯めこみにくくなり、肺水腫や胸水貯留による呼吸困難や動脈血栓塞栓症を生じる場合があります。
治療は、各種検査により病気のステージを診断し、状態にあった投薬による内科治療を行います。併発疾患がある場合は、その治療も重要になります。
こんなことはありませんか?
- 好発猫種である(メインクーン、ペルシャ、ラグドール、アメリカンショートヘアなど)
- 聴診で異常心音が指摘された事がある
- 呼吸が早い
- 運動を嫌がる
- 突然後足を痛がり、立てなくなった
大動脈血栓塞栓症
猫では心筋症との関連が有名ですが、大動脈などの血管内で血栓が詰まる病気で、劇痛を伴います。緊急性のある疾患であり、早期治療介入が必要です。もちろん、犬でも起こります。血栓はどこでも起こる可能性がありますが、一般的には、後肢に関連する領域での発生が多いため、突然の両後肢麻痺を主訴に来院されることが多いです。治療には、状態の安定化、疼痛のコントロールの他、血栓に対してカテーテルによる血栓除去治療、薬剤による血栓溶解療法、抗血栓治療などがあります。発症時期、動物の状況に応じて治療法の選択が必要となります。
こんなことはありませんか?
- 突然後ろ足を痛がりだし、立てなくなった
- 足先が冷たく、紫色をしている
先天性心疾患(動脈管開存症、肺動脈狭窄症など)
動脈管開存症
動脈管開存症とは、胎生期に肺動脈と大動脈を繋いでいた動脈管と呼ばれる血管が、出生後に閉鎖せず開通したままである先天性の病気です。本病気の場合、生後1年以内に70%の症例で左心不全により亡くなってしまうと言われているため、診断後はできるだけ早期の動脈管を閉鎖する手術が必要とされています。
当院では、開胸下による外科的治療を実施しております。
また本病気は、複合して他の先天的な心疾患を併発することや、時に手術が適応でない場合も存在します。ご不明な場合はご相談ください。
こんなことはありませんか?
- 健康診断時に心臓に雑音があると言われた
- 若齢である
- 運動を嫌がる
- 疲れやすい
- 咳をする
肺動脈狭窄症
先天的な心臓病の1つで、肺動脈弁の異常や、肺動脈がもともと低形成であることによって、右心室から肺動脈へ血液が流れにくくなる病気です。重症度によって内科治療が選択されるケース、外科治療が推奨される場合があります。
心室中隔欠損症
先天的な心疾患の1つで、左右の心室を隔てる壁の一部に穴が空いている病気です。一般的に穴の大きさにより病態は変化します。穴が小さい場合は無治療で生活可能ですが、穴が大きく、左心不全を呈する状況では外科的な治療が必要になる場合があります。
心臓腫瘍
心臓腫瘍は偶然に発見される場合もありますが、心タンポナーデと呼ばれる緊急の病態で発見されることもあります。発生部位や犬種、心膜液の特徴、他臓器の病変の有無などから腫瘍を分類することは可能です。
治療については、動物の状態、発生部位などを総合して飼い主様とのご相談の上で治療法を決めていきます。
こんなことはありませんか?
- 突然倒れる
- お腹が膨らんできた
- 元気、食欲がない
心タンポナーデ
心タンポナーデとは心臓の周りにある心膜内に液体が貯留し、心臓の動きに障害をもたらしている状態です。原因としては、心臓腫瘍からの出血、心膜腫瘍、心臓破裂などがあります。
緊急性のある疾患であり、早急に心膜穿刺を行い貯留している液体を採取する必要があります。繰り返す場合は、外科的に心膜切除を行うこともあります。
こんなことはありませんか?
- 突然虚脱、失神した
- 元気、食欲が無くぐったりとしている
心膜横隔膜ヘルニア
心膜横隔膜ヘルニアとは先天的に横中隔と呼ばれる領域の発達異常が原因で、横隔膜腹側にて腹腔と心膜腔が連絡することにより、腹部臓器の一部が心膜嚢内に入り込んでしまう病気です。犬猫の心膜奇形の中では最も多い病気です。
他の先天性心疾患が併発する場合もありますので適切な心臓検査が必要です。
治療に関しては、外科的なヘルニアの整復術を行います。
こんなことはありませんか?
- 成長が遅い
- 嘔吐や下痢、食欲不振がある
- 呼吸の様子が気になる
- 過去に心臓が大きい、または生まれつきの心臓病と言われたことがある
不整脈
不整脈とは心臓の心拍の異常、リズムの異常をきたす病気です。不整脈には臨床的に影響のないものもありますが、不整脈の種類によっては有効な心拍出が得られず突然のめまいや失神、心臓内で血栓が形成され動脈塞栓症を併発する可能性もあります。
検査時に不整脈が発生していない場合は、異常を検出できないこともあります。
不整脈疾患が疑わしい症状の場合は、24時間の心電図検査を行うこともあります。
治療に関して内科的に対応可能な場合は抗不整脈薬治療をおこないます。
不整脈の種類によってはペースメーカーによる治療が必要になる場合もあります。
こんなことはありませんか?
- 突然倒れる
- フラフラとめまいがする